お寺に入る前の職場の機関紙に文章を投稿させていただいています。
その3です。
「仏法腹念仏」です。
画像はクリックすると大きくなって読めると思いますが、
下に、原稿をのせておきます。
ご興味のある方は是非どうぞ。
『前回の記事では、
本堂に冷暖房、椅子席、
「4Kプロジェクター、150インチスクリーン、5.1サラウンドの映画設備」などを紹介しましたが、
写真がありませんでしたので今回掲載をお願いしています。
なかなか一般的なお寺には無い設備ですが、永正寺の施設の特徴は、これにとどまりません。
永正寺に来られる檀信徒さん、寺院やさまざまな業者関係等のお客様を、まずお通しする応接室は、
天井が高く、2m×2mの大きなガラスの向こうに中庭を眺める落ち着いた空間です。
中庭の蹲(つくばい)には、ヒヨドリなどが水浴びに来たりします。
そこで、「ようこそ、永正寺へおいでいただきました。
まず、お茶を一服どうぞ」という気持ちを込めて、「喫茶去(きっさこ)」という禅語もありますが、お抹茶をあがっていただいています。
椅子に座ったままの立礼(りゅうれい)で気軽にお茶に親しんでいただこうと、住職オリジナル設計の「炉・風炉両用台」が設置されています。
このお抹茶のふるまいは、
法要の際にお寺参りに来られた皆さんはもちろんですが、
夏のお盆の頃、
毎年8月17日に行われる永正寺の一大行事、「お施餓鬼」の際には、
朝5時から夕方5時まで、入れ替わり立ち替わり、
延べ1,000人近くの方にお出しするのです。
そして、
その「お施餓鬼」のお参りを順番に終えた皆さんのほとんどの方は、
お墓参りに行く前に、
境内の「茶所(ちゃじょ)」に寄られます。
その茶所で、
今度は「ソフトクリーム」をいただくことがすっかり習慣的に定着しています。
実はこのソフトクリームこそ、
永正寺の特徴を最も表しているものかもしれません。
住職が、
本気とも冗談ともつかない表情で、
「このソフトクリーム器械を入れるために、この茶所を建てたんだ」
と言う程のものですから。
これは例えば「盆踊り」が、
誰しもが小さな子どもの頃、屋台のりんご飴や綿飴、たこ焼きなどに惹かれて毎年のように楽しみにしているうちに、自然と盆踊りという風習が身についていき、それが遠い昔から今日まで受け継がれる文化として脈々と続いてきたように、
これが、
華やかな屋台の一切ない純粋な「踊りだけ」の盆踊りだったとしても、果たして何百年と続いただろうか?という投げかけなのです。
ともすれば、お寺は、
小難しい「説教」や「説法」、あるいは「念仏」「お参り」だけをしているような印象がありますが、
果たしてそのままで、
次の世代に、その貴重な風習が受け継がれていくのか大いに疑問を持っています。
ソフトクリーム目当てでも、
孫がお参りについてきてくれると嬉しいですし、
きっとその子が大人になった時に、
「毎年お盆に、よく分からないままお寺お参りに行ったけど、ソフトクリーム食べるの楽しみだった」と懐かしく思い出すという気持ちとともに、
自然とご先祖様に手を合わせる心が出来ていくのではないかと思えます。
永正寺先代住職であり、私の祖父でもある月江住職は、
生前、「仏法、腹念仏(ぶっぽう、はらねんぶつ)」とよく言っていたようです。
何百人も集める説法会や法話会を数多く開いてきた人なのですが、
「仏法は、説法や念仏ももちろん大切だ。ただ心や考え方をいくら説いてもお腹は満たされない。実際にお腹が満たされることこそ、本物の仏法なのだ」。
正月の伝統行事である「大般若」でも、数百人分の五目御飯接待を続けています。先代月江住職から現住職、そして私へと、この伝統を引き継いで行きたいと思っています。』
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